■ MAE today

この欄には当研究所の近況や、今思うことなどを概ね1回/月のペースで気ままに書いていこうと思っています。どうぞお気軽にお読みください。    → MAE board

00.09:今月も「建築と社会」誌「建築の眼」よりです。

建築の強さ

むかし読んだ本で森田慶一先生の次の一文が印象に残っている。
「建築は自然の破壊に抵抗する強さを持っていなければならぬ。」
(森田慶一著「西洋建築入門」はじめにより)

最近の建築は大変美しいけれど、何かひ弱な印象を受けるのは私だけだろうか。

機械の時代からエレクトロニクスの時代になり、建築の世界にも新しい感性や表現が現れてきたが、どうも強さとは逆の方向のようだ。
新しい表現には私の感性も揺さぶられ、それらを否定する気は毛頭ないけれど、建築の強さを求める流れも、より成熟していって欲しいと思う。

カーンのソーク研究所を訪れた時の感動は忘れがたい。
自然に対峙した構築物は毅然としてひたすら力強い。 力強い故に自然というものの恵みを実感として受けられる。 柔らかな自然に対峙し、硬くコンクリートの造形を立ち上がらせることによって、人間の知なる業に強さを与えているのだ。

やはり素晴らしい。

「建築と社会」 1999.11号

00.08.29