■ MAE today

この欄には当研究所の近況や、今思うことなどを概ね1回/月のペースで気ままに書いていこうと思っています。どうぞお気軽にお読みください。    → MAE board

01.11:最近話題が多かった近代建築についてです。

近代建築から

少し前になりますが芦屋で「関西のモダニズム20選」展が開催され、それに関連して東孝光、石田潤一郎、両先生のセミナーを聞きに行ったりで「近代建築」を懐かしく思い起こし、古い雑誌などを見返したりする今日この頃です。
そんな中、書棚の古いファイルから出てきたのがこの写真です。これは卒論のために1975に撮影したものです。

東京目白の「自由学園明日館」で・・・誠に拙い卒論だったとはじめにお断りしておきますが・・・当時私は日本の大正建築の中で遠藤新さんをテーマにしていました。大正建築を通じて日本のモダニズムをあぶり出そうと考えていたのですが、結果はそれとは異なり自由学園と関西の甲子園ホテルで体験した流れるような空間構成にいたく興味を覚え、それを記述したような内容となりました。

基本的には中央にメインスペース、左右に諸室を配したシンメトリーな構成を持ち、規模が大きくなればその内容に応じてヒエラルキーを持ちながら、あるいは同等に連結されながら、想像以上に軽やかに流れていく空間が潜んでいました。

流れを生むよう巧妙に計画されたステップ(段差)が、室内の各サイズや光と影のリズムと言った要素と同調し、見事に総合化された空間デザインとして訴えてくる、と書いたように記憶しています。シンメトリーから受ける古典的な印象を裏切るような内部の空間構成が大変印象的だったのを覚えています。

一番最近の日経アーキや新建築ではこの自由学園の保存改修のレポートが掲載されています。実際に使いながらの保存継承という好ましい結果となったようですが、その現実を見据えると単には喜べない、と言ったニュアンスの記事でした。

残したいけど残らない建物が多い中、経過はいろいろあろうけれど、結局は・・・甲子園ホテルも残っているのをふまえて・・・お荷物でも魅力あふれるものは残る、と言うことなんだろうかと思った次第。

そう言う建物をいくつ設計できるのだろう、と思う今日この頃でもあります。

01.11.05