■ MAE today

この欄には当研究所の近況や、今思うことなどを概ね1回/月のペースで気ままに書いていこうと思っています。どうぞお気軽にお読みください。    → MAE board

02.05:この連休の出来事です。

アマの力

一年前にひょんな事で知り合いになった神父様が、社会的に少々問題ある人を集めて丹後の方で農園をやってると聞いていたのでこの連休を利用しそこを訪ねてきました。そこは日本各地に見られる山間の小さな集落で、そのはずれの畑の傍らで5〜6人が生活を営んでいました。
建物は農家の離れ家の作業小屋らしく、正直住環境としてはかわいそうなものでしたが、作物用のビニールハウスを増築したり、いろんな部分をつぎはぎしながら、みんなでたくましく住んでいるようでした。

しかし眼を見はったのは背後の山の上にある小さな庵のような建物です。
4mほど上部にある緩い傾斜地にそれは建っていました。
アプローチはほぼ30度に近い土間コン舗装のスロープ。
どこから集めてきたのか、廃材の角材や桟木やベニヤ、トタンなどを自由自在に駆使し、基礎CB造、本体木軸工法平屋建ての教会棟と住居棟が彼らの自力建設で造られていました。
屋根はトタンの波板、外壁も一部はそれであとは杉のバラ板やベニヤ。
アルミサッシや木製扉が付いてはいるものの、屋根と外壁の取り合いなど明らかに隙間が空いているが、それはもう立派に建築と呼べるものでした。

全てが廃材でそして全てが自前で建てられた建築。
その姿は力強く、大変なショックと共に感動を覚えました。

川縁や公園などで浮浪者が段ボールやブルーシートで何とか身を覆うスペースを造っているのを見かけますが、それらとは明らかに違い、今の社会に何とか適応し、しっかりと地に足をつけて生活を営もうとする、その意志、その迫力。
それらがひしひしと伝わりより心を動かされたのかも知れません。

建築の力をまざまざと見たように思いました。
建築家や工務店ではなく全くのアマチュアによって提示されていたその姿をしばらく忘れることができないだろうと思います。

02.05.04