■ MAE today

この欄には当研究所の近況や、今思うことなどを概ね1回/月のペースで気ままに書いていこうと思っています。どうぞお気軽にお読みください。    → MAE board

02.12:今年も残すところ後一月となりました。充実した年末をお過ごし下さい。

建築士の性能表示

先日建築士会のCPD制度の説明会へ行ってきました。
CPDとはContinuing Professional Development の略称で、建築士は絶え間ない自己研鑽努力が必要とのこと、当たり前の話である。
しかしながら一部には心ない人たちもおり、そう言う人を排除し社会の信頼を回復するために建築士とはどういうものかを改めて一般の人たちにアピールする必要があるとの認識から出てきた制度のようだ。
しかしその内容は何かちょっとおかしい。

簡単に言えば自ら(建築士会)が自らの活動や仕事に対して点数を付け、それが年間トータルである基準点以上になれば合格(と言うのか及第というのか)と言ったもので、聞いていて住宅性能表示制度を思い浮かべてしまった。

それは以前にも言及したが住宅をある性能的な側面のみで判断し優劣を付けると言ったもので、このCPDも同じく非常に表面的な、例えば設計した作品の数やセミナーや講習会へ参加したかどうかなどの事柄で点数が決まり加算されていく仕組みであり、建築の本質や深みを支えている構想や思考が評価されない上辺だけの建築士能力表示のようで、住宅性能表示制度と同類のものに聞こえてしまったのです。

何年も掛けて心を込めながら一つの作品を創り上げていこうとする建築士はおそらく及第しない。
この点数設定はまだ試案のようですがどうも納得できない内容のようなのです。
我々がアピールすべきは講習会やセミナーへ行った回数ではなく、それらをもとに与えられたプログラムを熟慮していかに現在の社会での建築のあり方を考察し得たかどうかと言う点にあろうと思うのです。その思考が建築の質を支え、建築士の能力を示すものだろうと思うのです。

その評価の物差しが無い故に我々と一般の人との間には距離があるのだろうと思います。
そのような物差しをどのように作ればいいのか、あるいはできるものなのか。
その問題意識は共有するのですが、それを形式的な点数に依ろうとする今回の制度は返って建築士の仕事が軽く見られるような風潮に繋がりかねない、そんな危惧も感じるのですがみなさんはいかがお感じでしょうか?

次ぎに続く専攻建築士制度も何か方向が違うような気がしてなりません。
このような動きは果たして時代を的確に掴んでいるのでしょうか?
結局は制度の問題ではなく、(建築的)教養の問題だと思うのですが・・・

02.12.03/12.06修正/04.03.06一部追記