■ MAE today

この欄には当研究所の近況や、今思うことなどを概ね1回/月のペースで気ままに書いていこうと思っています。どうぞお気軽にお読みください。    → MAE board

03.02:以前から思いながらなかなかまとまらないのですが・・・

アルバム作りの視点

先日ビートルズの「Abbey Road」が無性に聞きたくなってCDを買ってしまいました。Shuoo...と始まる”Come Together”から組曲のラストを受け持つ”The End”に至るまで一つ一つの曲を堪能させながら流れるように最後まで緩むことなく、しかもおまけまで付いてくると言う組み立て方は昔から大好きでした。その前にリリースされた「Sgt.Pepper's」も然り、4人の天才の凄さに感嘆したものでした。

以前からアルバム作りは街づくりに通じるのではないかと思ってきました。個々の建物が紡がれて街へと展開していく様が、一つ一つの曲がまとまってアルバムとなりより豊かな表現が可能になっていくのと同じように思えるからです。

しかし残念ながら建築の分野ではより高度な表現に至らないのがほとんどのようです。シングルリリースのように個々に優れた建築物は数多く出てくるのですがどうもアルバムにはなっていかない。アルバムにはやはり名曲やヒット曲が欲しいのですが、ヒット曲だけではベストヒット集になるだけで音楽性豊かなアルバムにはならないと言うことなんでしょうか。

その最たる理由はもちろん一人の主体が全体を計画デザインすることができないことにあるのでしょうが、逆に他者が混ざり合うことで単調な全体にならず、豊かなアルバムになる術が何か無いのかと思うのです。

我が国の場合個々の建物が依って建つ都市的景観がなく、また我々の通常の仕事も一つの敷地の中で完結してしまうのですが、例えば槇さんの代官山。これは一人が継続しえての成果だけれど、それがある事で既存のマニュアルとなるし、原さんの渋川駅前(いずれも古い事例で恐縮です)のようにマスタープランを上からかぶせたり、更にはマスターアーキテクトの起用など、いろんな先例や試みがあったはずなのに、どうも後が続かず優れた成果が見えてこないと感じるのです。最近姿を現した東京のビッグプロジェクトも一つ一つは凄いのにその集合がなぜあのような姿になってしまうのか。

そう言えば冒頭の4人組にはアルバムプロデューサーとしてもう一人の天才、ジョージ・マーティンがいたんですねぇ。そう言う役割の人は一体誰になるんでしょうか、はたまた果たして現れてくるんでしょうか?
今宵もビートルズを聴きながら思いを馳せて・・・
誰か付き合っていただけますか?

03.01.31