■ MAE today

この欄には当研究所の近況や、今思うことなどを概ね1回/月のペースで気ままに書いていこうと思っています。どうぞお気軽にお読みください。    → MAE board(メンテでしばらく休みます)

06.08:車窓風景より

屋根と壁

先日新幹線から何気なく外を眺めていると、日本の風景は緑色なんだと改めて気がついた。山々の緑、林、木立の緑、草花、そして稲や野菜。
とにかく緑の背景が「地」となりいろんな建築物が「図」として並んでいる。
そしてその「図」で目を引くのは屋根であった、と言うより黒い屋根の建物が並ぶ様が実に緑と馴染むのだと改めて実感したのだ。

新幹線は一段高いところを走るので小さな集落は俯瞰的に全体を見る事が出来、緑の背景と無彩色の建築群、つまり屋根の集まりが一体となり大変美しいのである。集落の風景とは屋根の風景なのである。
しかし次の瞬間、電車がほぼグランドレベルになったとき、風景は一変して壁の風景となった。そしてそれは全く美しくなかったのである。
これはどういう事か?

壁が見えれば何故美しくないのか?
もちろんそれぞれがバラバラだったせいもあり、今までは何故そうなるのかを問おうとして来たが、その時はふと背景が無いのに気づいたのである。アイレベルでは背景も別の建築物で要は「地」が無いのである。

建築をデザインする時往々にしてその全体を「図」として考えてしまう事に改めて気づかされた。今思えば多くの場合「地」としてのデザインが必要だったのかも知れない。あるいは「地」が無い時にどうすべきかを考えなければならなかった。それと屋根にはほとんど窓が無いことを思うとき、結局ここでも主題は開口部に行き着く、そんな思いが巡った車内のひと時でした。

06.08.01