■ MAE today

この欄には当研究所の近況や、今思うことなどを概ね1回/月のペースで気ままに書いていこうと思っています。どうぞお気軽にお読みください。    → MAE board(メンテでしばらく休みます)

06.10:大変有効なキーワードに思います。

部分と全体

もうずいぶん前からこの言葉をキーワードにいろいろ考えてきました。
そして建築設計に関しては大変有効な言葉ではないかと思ってきました。

ある建物を設計する時はほとんど無意識にその一つを全体として設計していると思うのです。視覚的になら屋根や壁や窓などを部分として捉え、そのトータルな状態がどうかと考え、機能的にもその建物だけでその目的が達成されるよう、他に依存しないようプログラムを考える。それが当たり前でそのこと自体には誰も異論をはさまないのではないでしょうか。

しかし私の場合以前のあるコンペで一種ランドスケープ的なデザインを指向したとき、今まで部分としてしか考えてなかったものに1個の独立した輪郭を与え敷地一杯に散らばめた時、新しい答えが見つかった気がした瞬間がありました。大げさに言えば眼から鱗の瞬間で、その後それまでの頭の中、例えば街並や環境の問題とか住居と都市の問題とか、単に設計デザインの範疇以上にいろんな事象の理解、構想に置いてもこのキーワードで確認していくようになりました。

例えば「対」と言えばその二つで全体像を結べている状態だと思うのです。街角などで一つ一つの建築が全体でもあり部分でもある状態。そう言う事が連続して行けば街並に繋がって行く。しかし単調でなく魅力に溢れるというのはそれぞれの部分が主張している、つまり全体を持ってる事、そんな風に思うのです。
言ってみれば部分と全体の重層構造ですがなかなかそれが難しい。
いかに美しく調和した全体を造り出せるのか。そしてどこでその全体像を結べるのか。従来から言われている建築の課題はこのようにも言え、思いがけない部分に全体像を与えたり、より広範な全体を見つける事で新たな可能性が広がる、そんな気がしています。

06.10.02