■ MAE today

この欄には当研究所の近況や、今思うことなどを概ね1回/月のペースで気ままに書いていこうと思っています。どうぞお気軽にお読みください。 

09.09:ん〜ん、と唸ってしまいました

住宅建材

設計をやってますと常に「何かいい材料無いかな?」と探しています。もうそれも何年も何十年もです。で、最近思うようになりました、つまり今はいい材料はない、と言う事を。あってもそれを使えるのは一般論の範疇を超えた特殊な物件だけだと。
大手メーカーの定番商品からベンチャー(と呼んでいいか分かりませんが)会社の新製品まで、何か良さそうなものが見つかったと思っても性能やコストの面で竣工までに当たり障りの無い普通の材料に置き換わってしまう事が残念ながらあります。
「普通」と書きましたが設計者が使いたくない材料を使わざるを得ない状況に陥る時があるのです。今典型的なものはアルミの住宅用サッシとサイデイングなど、いわゆる住宅建材というものでしょうか。
1軒の家を建てるのにこれ1冊でOKと言う住宅建材カタログもあるようです。さらにはそれがある工務店の指南書になってたりしますとこれはたまりません。
どうすればそこから脱却できるのか、いつもいつも苦労します。
先日も信じられないものを見てしまいました。

 
左:間違いと右:正解?

左の写真を見て下さい(写真をクリックすれば大きくなります)
竹富島の伝統的集落の1軒に嵌め込まれたアルミ住宅サッシです。
もちろんいろんな理由があるのでしょう。
伝統家屋の木製建具の多くはかなりガタが来てるのが外から見ても分かるので建築主は性能が上がって大満足かもしれません。 軒下空間をやめてしまった方が罪は大きいかもしれませんが、しかしこれはないやろ、と正直思ってしまいました。正しくは右の写真であるべきなのですが、こちらはこちらでその内何か手を入れてやらねば、などと思います。
どんな建物でも時代の新しい材料や製品を使って維持していきたいわけですが、建物全体を損ねてしまっては意味がありません。何か特別な保存プロジェクトでもない限り、今は良さを残して使い続けるのにかなりの覚悟をオーナーに強いているのが現状ではないでしょうか。現実の我が国の建築界はもっとこの要望に応えるべきだと言う気がします。
材料や製品の工業化は必然なのですが結局はその背後に建築の価値を見据える正しい認識があるかどうかと言う事なんでしょう。
我々も自分の事として常々その事を再確認しなければいけないと思わされた体験でした。

09.09.01