■ MAE today

この欄には当研究所の近況や、今思うことなどを概ね1回/月のペースで気ままに書いていこうと思っています。どうぞお気軽にお読みください。 

11.09:秋の気配、と言うより残暑厳しきおり、ですね

民都大阪の建築力

表題の展示会を見てきました。大阪歴史博物館開館10周年特別展です。
「近代建築における大阪らしさとは何か」この歴史博物館の学芸員でおられる酒井さんの継続したテーマの一環として、1.描く力、2.装飾の力、3.伝える力、なる3部で構成されていた。

個人的には描く力、つまりいろんな図面を見るのを楽しみにしていた。
造幣局やアサヒビールなど多分初めて目にする図面であったが、保存できていないのか、展示はほんの一部のみで、これは全体に共通で少々残念であった。
そんな中改めて目にしたのが中央公会堂の応募案である。13者それぞれの様式建築のアレンジメント。残念ながら自分は評価できる眼を持たないが、細部デイテールの執拗なまでの集積にはやはり眼を奪われる。凄いエネルギーである。
珍しい所では大阪の市立小学校の建築パースが並べられていた。中央公会堂を見たせいもあろうが、その何とも中途半端の魅力のないデザイン、なぜこうなってしまったのだろう、本当に残念である。
最後のコーナーでは大阪ゆかりのゼネコンさんの紹介があった。そこでは竹中さんのパースがやはり目を引く。当初から設計デザインを前にうちだした結果なのだろうか、それとも単に資料の保存状態の問題か、他社の描く力ももっと見たかった。
第2部の装飾の力は安井さん村野さんはじめもう今までいろんな所で見慣れた感がありあまり興味が湧かなかった。
その分余計に興味を持ったのが3部の伝える力である。その中でも大阪の近代建築のオーナーたちの紹介である。
そう、今現在こうして大阪で近代建築が注目されるのはひとえにこれら個人オーナーの覚悟と決断の賜物なのである。
建築ストックの制度がなかなか根付かない中、惜しまれながらも多くの名建築が姿を消して来たが、その中で生き延びるというのはひとえに保存そして維持管理の経済的負担を覚悟されたこの方々のおかげなのである。
テレビではないけれど「あっぱれ」と申し上げたいし、そしてこの厚みが大阪の建築力を支えていく、と企画者は言いたかったのだろう。
ささやかですが、弊社も応援しています。

11.08.31