14.10:いまさらと言えばいまさらですが

ヴォーリズ

ウィルアム・メレル・ヴォーリズ。
大丸百貨店や大阪教会や豊郷小学校などなどで、もちろんその名を知ってる訳ですが、いままであんまり興味がありませんでした。
でもあれは5年ほど前でしょうか、武道家いや哲学者と言うべきか、教授でおられた内田樹氏のブログで「神戸女学院」のことが書かれておりそれがずっと心に残っており機会あらば一度是非とも見ておきたいと思っていたその機会が先日やっとありました。
「あにあん倶楽部」企画の「阪神間モダニズム」という団体のバスツアーですが、運良く抽選に当たり初めて神戸女学院を訪れました。

残念ながら南の有名な正門からのアプローチはできず、西側の急斜面を階段で上り、講堂、チャペルのあとキャンパスの中心である中庭を経由して図書館を巡りました。
(文学館理学館は入れませんでした)
多分に内田氏の文章に影響されていますので少し抜粋させていただきます。
氏は阪神大震災で被害にあった建物の修復過程において「ヴォーリズの建物は生き物のようで瓦礫を撤去するというより傷口に赤チンをぬったり包帯を巻いたり」そんな気分だったと言われます。そしてその過程で建築家のいろんな「仕掛け」に気づき、
「隠し廊下があり、隠し階段があり、隠し扉がある。建物全体がある種の迷路のようになっており扉の先に何があるのか、廊下の先に何があるのか、実際に自分で歩いて扉のノブを廻して中に入らないとわからない」
暗くて怖いけれど「自らの好奇心でノブを廻したものだけに与えられる思いがけない眺望、思いがけない風景が用意されている」「校舎が人をつくると言いましたが学びの比喩としてこれほど素晴らしいものはない」

2時間足らずの訪問でしたがこの文章が表現してるところを体験したと思いました。
チャペル。その簡素さ、その気高さ。配置とファサードが素晴らしかった。
中庭。4っつのファサードが向かい合いそれぞれが呼びかけるように語りかけてきます。図書館はみんなが利用する快適な場所として中に入れば迎えてくれる感じです。
ここでは様式の部分的な引用や装飾的な処理が実に効果的で、建物は顔を持ち、語りかけ迎えてくれるのです。
顔のない現代建築に囲まれるキャンパスとは明らかに一線を画し、ミッションスクールに相応しい品格と気高さを感じます。
隠されたものを発見した訳ではありませんが、自らの意志で尋ねていけば応えてくれる、短い時間ながら「校舎が人をつくる」という体験ができた気がします。

*神戸女学院HP
http://www.kobe-c.ac.jp/

14.10.01