16.06:もう初夏、嫌な梅雨。

樹林の家

先日ある建物を見て感動した。仕事柄建物は、いわゆる名作と呼ばれるものも含めてよく見に行くが、この感動は久々のものだった。忘れていたものが蘇ったような感覚だ。
それは淡路島の海を見下ろす山の中腹にある。



「樹林の家」という名称通り大木に囲まれ少し身をくねらせて横たわっていた。
横たわると書いたが、これは建築家の意図だろうか、山の上から降りて行くルートで案内された結果、上から見るとそう見えたのだ。そして中央部は視線が抜けて軽やかに浮いていた。
建築家は本多友常氏。この作品がJIAの建築賞を受賞したことに伴い、氏が教鞭をとっておられる摂南大学の見学会に便乗させてもらったのだ。

 

建築家自らの案内による見学は質問に対してもピンポイントで返答があり大変勉強になる。
見所は多いがやはり一番は山の中腹に建つその立ち方である。
説明によると表土の下にはすぐ岩盤層がありそこに杭を打ち込んで建物を持ち上げ、山の地表面を流れる雨や土をしのぐ。そしてそれは敷地全体のランドスケープにおいても隣地への影響を避けるよう地形上安全な方向へ流れるよう配慮されている。
そういうことが支えているのか、何よりその姿がかっこ良く力強い。
通常の個人住宅の規模の建物であるが見学しながら私の教科書である森田慶一氏の「西洋建築入門」の序文を思い浮かべていた。
「建築は自然に抵抗する強さをもっていなければならぬ」
山の斜面地と言う条件がより効果を増し、大地に立つ建築という根源のあり方を垣間みたような気がした。
JIA建築賞の審査員である西澤立衛氏の講評を抜粋する。
「・・・不思議なダイナミズム、大地との有機的調和があった。・・・人間と大地との戦いがダイレクトに建築化している。建築の小ささをものともしないスケールの大きさにたいへん共感した」
全く納得のいく講評であり、大賞に遜色のない素晴らしい建物でした。

16.06.06