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20.10:はや10月

隠れた西洋

先日転害門の近くにある昔「会所」と呼ばれる建物を見に行った。町の集会所のことである。
そこは奈良の「きたまち」と呼ばれる1画で東大寺に接するロケーションから非常に歴史深い界隈である(に違いない。不勉強で歴史は分かりません、すみません)
建物は写真にあるようにそう大きくない(他の会所の事例に比べると大き方だそうだが)木造平屋建て瓦葺きで、聞くと昭和14年竣工ということで築80年を越している。

内部は集会所ということで大広間をメインに付属室が並ぶ。その大広間はタタミ、床の間、床脇、書院、格子天井といった純和風と言えるインテリアで障子の組子も細やかで優雅な和の意匠が凝らされている。

と、ここまでは古都奈良では普通に古い(都市部では貴重ですが)100年ものの建物だが、中にはあっと驚く構造体があった。写真では分かりにくいがムクリのついた瓦屋根の外観からはとても想像できないキングポストトラスの小屋組なのである。
平城京奈良のお膝元の瓦屋根を支えてきたのは西洋の技術だった。しかも昭和14年というのは確か大戦が始まる2年前。当時の社会状況が全く想像できないが、あっけらかんと西洋技術とのハイブリッドが成立していることが大変興味深い。しかもこの近辺にはこのトラス構造の建物がまだ残ってるらしく、古都奈良の木技術の懐の深さを感じた体験だった。

20.10.01