24.05:早くも初夏の雰囲気です。

リノベーション2題

先日届いたTOTO通信2024春号は「時の積み重ねをデザインする」というタイトルで大変興味深い内容でした。
冒頭の加藤耕一氏へのインタビューは次に続く最近の事例の格好の解説になっています。
その中の二つにとても惹かれました。

一つは京都の郭巨山会所。
祇園祭の山鉾を保存運営するための会所(築100有余年)の増改築だそうで建築家は魚谷繁礼氏。
既存建築はいわゆる町家形式で表の2階建母屋と奥の土蔵が塀と土間で繋がれている。それをそのままに鉄骨で補強して両者の屋根に新しい屋根をかけ渡し一体化したのが大胆で凄いところ。一見昔からそのまま建ってるようにも見える。
また京都市街地の古い木造建築となれば様々な法規制や困難が容易に想像されるが、魚谷さんは新旧全体を保存建築物の指定を受けることで解決しその発想力推進力に感心いたしました。
1200年の歴史ある古都京都の重みを感じる建築です。

もう一つは大阪北加賀屋の千鳥文化。
造船の町として栄えた北加賀屋の旧千鳥文化住宅(築6〜70年)の改修プロジェクトで建築家はドットアーキテクトの家成俊勝氏。
この建物の特徴は何と言ってもその廃墟のような廃れぶりに見える。本当に残すのか、普通は壊す、だろうと思える外観だ。
この建物は建築専門の大工ではなく船大工たちが船や廃屋から材料をかき集めブリコラージュして建てられたらしく、家成さんたちは解体しながら一つ一つその即興的な断片を確認しその面白さに惹かれていったように想像する。
継ぎ接ぎのような断片をわざわざ手間をかけてそのまま残し、新たな構造体と回遊する動線で再統合していく。その膨大で緻密な作業と新しく手を加えられた要素が見事なまでに融合し、できた姿は今までと同じく”ボロい”(文中にこういう表現がありましたので)のですが、ここでの暮らしの積み重ねがそのまま継承され、自由で生き生きとした魅力に溢れる建築です。

お二人には建築家の意志の力を存分に見せていただいた気がします。

24.05.01
24.05.04:一部修正