24.09:月が替わり空気が変わった気がします、まだまだ暑いですけど・・・

点と線

建築も、時の流れに身をまかせ。
以前紹介したTOTO通信30周年記念号の加藤耕一氏のインタビューのタイトルです。
建築史家でおられる氏の言説は大変示唆に富み刺激的です。

先のTOTO通信で、氏はロイス・リーグル氏の著書「現代の記念物崇拝ーその特質と起源」に書かれた「経年価値 Age Value」と「歴史的価値 Historical Value」の二つの概念を示され、現在の文化財保護の観点では、建築には、時が積み重ねられた「経年価値」と古い建物が新築された時に備わる「歴史的価値」があるとされます。

しかし西洋では19世紀の頃は、文化財的な建築感として、時間を巻き戻す「修復」と、時間を止める「保存」に重きが置かれ、また日本でも1897年の「古社寺保存法」を背景に、歴史的建造物に対する考えが「当初復元」に寄り、いずれも経年価値より歴史価値に重きをおく傾向になっていたようです。
この経年価値を「線」歴史価値を「点」に置き換えてみれば、我々が親しんだ建築の価値感は「点」に偏ってきた傾向があり、建築史もそれらが年代順に書き並べられたものと言えると思います。

以下私見が混ざりますが、そういう中、近代建築が登場しざっくり100余年。戦後建物はスクラップエンドビルドを繰り返し都市や街を掻き回し、多くの「線」が断ち切られ、新しい「点」が集まるだけの深みのない街となってしまった。
新しい「点」は「線」を創り出せるのか、また将来「線」となって繋がっていけるのか。また近年充実してきたリノベーションの場面でも、過去から現在までが「線」でも、その先が「点」になってしまえば意味をなさないとも言える。

氏ははっきり言われる。
文化財だから残すのではなく、アノニマスだから壊すのではなく、またその場しのぎ的に増築を重ねた渾然一体としたものを選り分けて壊すのか残さないのかを判断するのが建築家の重要な役割である。
「経年価値」に目を向けると、建物に積み重ねられてきた時間の可能性が見え、建築の歴史は様式や形態に基づく「点」ではなく、長く持続する時間を内包する「線」で書き換えられる可能性がある、と。
そうなればそれは革命ではないかと思います。

24.09.02